ジンマー・バイオメット合同会社は、米国インディアナ州に本社を持つ筋骨格系ヘルスケアのリーディングカンパニー、ジンマー・バイオメット社の日本法人です。日本国内での整形外科用インプラントと手術機器の輸入・製造・販売を一手に担っており、患者さん一人ひとりにカスタマイズしたソリューションや最先端の医療技術を提供しています。同社の事業において顧客に製品をお届けする物流は非常に重要な役割を担っています。
「神奈川県の平塚市に関東エリアの物流センターがあり、アメリカ、オランダなどから製品を輸入し日本国内で品質検査をした後、法定表示ラベルやRFIDタグを貼付し製品を保管、約800社の医療機器ディーラーから注文を受けてディーラー経由で約3,500の医療機関へ製品を出荷しています。当社の事業モデルは医療機器の貸出しビジネスであり、患者さん一人の手術に合わせて必要となる同一インプラント製品およそ100サイズをディーラーを経由して病院などの医療機関に貸出します。手術後は患者さんに適合した1サイズを除き、未使用の99サイズの製品が物流センターに返却され、返却品の検査を行って、ようやく1つの取引が成立します。患者さんの健康にかかわる製品を扱うため、正確かつ迅速な物流体制の構築は我々の重要なミッションです」と語るのは、同社の大谷明氏(以下、大谷氏)です。
2016年と2023年は、いずれも同社の物流体制の大きなターニングポイントになった年でした。今回は2つの物流サービスの導入について時系列に沿って紹介します。
ジンマー・バイオメット合同会社平塚事業所(関東エリアの物流拠点)
①「24時間緊急配送サービス」の課題・対策・効果
課題:会社合併に伴い、全国16拠点の緊急倉庫における複雑な運用と拠点重複によるムダな物流コストが発生
ジンマー・バイオメット合同会社は、2016年にジンマー社とバイオメット社が合併し誕生しました。合併によって生じた課題の1つが、両社それぞれで運用していた緊急倉庫でした。緊急倉庫とは、医療機関で機器故障や緊急手術があった場合、速やかに製品を配送するために医療機器を保管する倉庫です。「両社合わせて16の緊急倉庫があり、出荷作業は複数の大手宅配事業者に委託するケースや自社の営業所から出荷するなど倉庫によりバラバラでした。しかも委託先ごとに異なった運用ルールがあり、管理の煩雑さに加え、製品をオーダーする営業担当者からも非常に使いづらいという声が上がっていました」と、同社の大下隆良氏(以下、大下氏)は当時の課題を振返ります。
さらにジンマー社とバイオメット社の緊急倉庫の配送エリアが重複していたため、運用稼働や物流コストのムダも発生していました。こうした合併直後の混乱でビジネス機会を失う事態も招いていたため、配送エリアの重複の解消に加え、委託先を絞って統一のルールで運用できる物流体制の構築が検討され始めました。
対策:全国の拠点において統一された運用が可能な「24時間緊急配送サービス」を導入
「さまざまな委託先のサービスを検討した上で、最終的にNTTロジスコの24時間緊急配送サービスの導入に踏み切りました。特に私たちが必要とする配送エリアに対してNTTロジスコが要望に応える形で緊急拠点の新設を提案していただき、また24時間365日体制で駆付け対応が可能で、さらに当社の物流管理部門や営業担当の使い勝手の良さが決め手になりました」(大下氏)
効果:物流管理部門や営業担当が利用しやすい緊急配送網の構築により、物流・販売管理コストの削減を実現
「やはり、お客様のニーズに速やかに対応できる24時間の駆付け対応は大きな魅力です。特に出荷件数の多い東京の拠点については作業者が常駐しているので、依頼から納品までのリードタイムが非常に短いので助かっています。また、16の緊急倉庫を13拠点に集約したことで緊急倉庫用の重複した在庫とムダな物流管理コストが削減できたといった効果も出ています。営業担当からは『これまで緊急倉庫で対応できなかったエリアでも迅速な配送が可能になった』『速やかな配送のおかげで病院のドクターから信頼してもらえる良い関係が構築できた』といった声が届いています。私たちのビジネスの優位性を高めるために、今後も24時間緊急配送サービスを軸にした施策を実施していきたいと考えています」(大下氏)
②「メディカルライナー」の課題・対策・効果
課題:「物流の2024年問題」に伴い通常配送サービス品質が低下
2023年、同社の物流業務に深刻な影響を与えたのが「物流の2024年問題」でした。この問題は働き方改革関連法によるドライバーの時間外労働の上限規制が適用され、物流の停滞が懸念される問題です。
「当時、当社製品の通常配送は大手宅配事業者の系列会社が提供する医療機器に特化した配送サービスを利用していました。しかし2024年問題対策として共同配送サービスの見直しがあり、従来22時半であった製品の最終集荷時間が21時半、さらに20時にまで前倒しされました。お客様からの注文に対して当日中に出荷するという運用が困難になったことに加え、医療機器に特化した配送サービスではなくなったため、輸配送中に製品が破損するといったトラブルも生じていました」と、同社の阿部敏次氏(以下、阿部氏)は振り返ります。
対策:画一的な大手宅配事業者のサービスに依存しない医療機器に特化した共同配送サービス「メディカルライナー」を導入
このままではお客様の求めるサービス品質に応えることが難しくなると判断した同社コマーシャルオペレーション部は新たな配送サービスへの移行を決断し、集荷時間や輸配送品質の課題をクリアするサービスとして「メディカルライナー」の導入に踏み切ります。
効果:柔軟な集荷・納品時間対応に加え、輸配送事故ゼロを継続中
「2023年6月から関東エリアの平塚事業所、同年12月に関西エリアの尼崎事業所で利用を開始しています。最終集荷時間は平塚が22時、尼崎が21時と大手宅配事業者と比べると遅い時間に対応してもらっています。また荷量増加時の対応や、翌日の8時から9時といった早朝納品をはじめ、確実に集荷・納品してもらえるのでありがたいですね。教育訓練を受けた専門のドライバーが医療機器メーカーとディーラーをダイレクトに配送しているため、輸配送中の破損事故などもなくなり、1日当たり300~400点を出荷しているのですが、導入開始から輸配送に関するクレームは1件もありません」(阿部氏)
現在、同社では首都圏(埼玉、千葉、東京、神奈川)、関西(大阪、京都、兵庫)に続き、北関東(茨城、栃木、群馬)への対応準備を進めています。さらなる物流の価値向上に向け、配送エリアを広げていく計画です。「大手宅配事業者のサービスはお中元、お歳暮の季節といった繁忙期には配送が停滞することもあります。医療機器専門のメディカルライナーは季節変動の影響もなく、決められた時間に決められた通りに配達されます。安心して自社製品を託せる高品質な配送サービスだと思っています」(阿部氏)
ジンマー・バイオメットの日本国内での売上げは毎年順調に6~7%伸び続けており、さらにサービス提供エリアを広げていくことが事業の成長に欠かせないミッションとなっています。「今後もお客様の求めるリクワイアメントを満たす高付加価値な医療機器物流サービスを展開していく計画です。また、すでに需要のあるエリアや潜在的な需要の高いエリアの近くで在庫を持つビジネスも展開する必要があると感じています。顧客本位でサプライチェーンの改善に取組んでいただけるNTTロジスコには、これからも良き協業パートナーとして、より高品質なサービスやソリューションの提案をお願いしたいです。物流のプロとして期待しています」(大谷氏)