NTTロジスコ

第7回 在庫精度向上を起点とした現場改善とお客様価値の創出

Mizoguchi Takuya

Mizoguchi Takuya

第6回「医療機器物流のノウハウを武器に挑戦した2拠点体制の構築と運用改善」では、医療機器物流のお客様への2拠点化提案と運用方法の業務改善についてご紹介しました。今回は、当社「東日本エンターテインメントロジスティクスセンター(以下、「東日本ELC」) 」で物流全体管理・人材育成・改善活動等を担当するエンターテインメントグッズ物流主査の溝口拓也が「在庫精度向上を起点とした現場改善とお客様価値の創出」について語ります。

溝口さんの経歴を教えてください。

私は2001年からNTTロジスコ千葉物流センターで勤務し、医療機器物流や通販物流の経験を経て、2018年からエンターテインメント(以下、「エンタメ」)グッズ物流のリーダーとして物流オペレーションの統括とお客様対応を担当しています。

千葉物流センターのエンタメグッズ物流にはどのような課題がありましたか。

私が担当するエンタメ業界のお客様は、音楽コンテンツの企画・制作・販売・配信を中心に事業展開されており、Tシャツやマフラータオル等のアパレル商品を中心としたアーティストのグッズを一般消費者・店舗・ライヴ会場など様々なチャネルへ向けて提供されています。しかし、コロナ禍によるイベントの中止や、音楽業界のストリーミング化によりCDやDVDの販売量が鈍化し、音楽関連事業が伸び悩むようになりました。一方で、お客様のアニメ・映像関連事業の拡大により、当社で新たにアニメ関連のキャラクターグッズの物流業務をお任せ頂けることとなりました。キャラクターグッズは多品種少量・形状の多様さ・入荷から出荷までのリードタイムの短さ・商品回転率の高さなど、在庫管理における難易度が高い商材です。そのため従来の音楽関連商材の運用では在庫精度※1が安定せず、在庫差異の発生や商品を探す手間がかかるなど、在庫精度を向上させることが課題となっていました。

※1  実際の在庫数とWMS(倉庫管理システム)上の在庫数の一致精度

NTTロジスコではどのようにキャラクターグッズ物流の在庫精度を向上させていったのでしょうか。

まず、取り扱っているキャラクターグッズを商品カテゴリー別、アニメタイトル別に細かく保管エリアを区分し、保管レイアウトも見直しました。その上で毎日の入出荷作業後、独自開発した在庫の名寄せツール※2を活用し、複数のロケーションに分散していた同一商品の在庫を1つのロケーションに寄せる在庫整理の時間を短時間でも設け、現場全員で「在庫を整える習慣」を徹底しました。こうしたオペレーションの改善を段階的に進めた結果、在庫精度は向上・安定し在庫差異がほぼなくなりました。

※2  複数のデータに分かれている同一商品のレコードを抽出・統合するツール

在庫精度の向上により、物流センターではどのような効果が生まれましたか。

在庫精度の向上により、ピッキング時にシステム上在庫があるはずのロケーションに商品が保管されていないケース等が解消され、現場の作業効率と品質が向上し、スタッフの心理的な負担も軽減されました。さらに、商品が出荷当日に入荷することも多く、当日入荷分の即日出荷納期を遵守するため、前日までに入荷済みの商品については、事前に出荷指示データから入荷済みの商品のレコードを抽出し、ピッキングリストの作成から検品まで完了できるようにするツールを導入しました。これにより、入荷済み商品の出荷作業の前倒しが可能となり、入荷日当日の出荷作業にもスムーズに対応できる体制を確立しました。ライヴ会場や店舗向けなど、納品期限がタイトなチャネルにも安定して出荷できるようになり、お客様からも高く評価をいただいています。
さらに、化粧箱入りの商品やアクリルスタンドなど破損リスクが高く、取扱いに注意が必要な商品が多いキャラクターグッズ商材に適した梱包資材を新たに設計・導入しました。多種多様な商品を1納品先に100アイテム以上出荷する場合でも破損を防ぎつつ過剰梱包を避けるため、仕切りとして活用できる複数種類の小型段ボールを開発しました。作業効率と梱包強度のバランスを両立した資材としてお客様からもスタッフからも評価を得ています。

そうした取り組みにより、お客様と当社にどのような効果をもたらしましたか。

お客様に対しては、イベント開催日やグッズの発売日等の納期を遵守した安定した高品質な物流サービスのご提供が可能となり、お客様の事業の多角化と売上拡大を物流面から支援させていただいています。当社としてもお客様からの信頼のもと、アニメ・映像関連分野におけるエンタメ物流のノウハウをより一層深める効果が得られています。

また2024年10月には、エンターテインメントプラットフォームの充実・強化を目的に開設した東日本ELCにお客様物流の移転を実施しましたが、365日稼働であるお客様物流の入出荷作業を止めることなく、移転に伴うコストも最小限にとどめた移転プロジェクトを無事完了しています。

長年物流現場に携わっている中で重要視していることは何ですか。

私は常に「どこを向いて作業をするのか」を考えています。荷主であるお客様、エンドユーザー、納品先店舗、アーティストの方-すべてが私たちにとっての大切な「お客様」です。そして物流現場ではスタッフ一人ひとりが主役です。スタッフが「この会社で働いてよかった」「人間的に成長できた」と思える体験や環境を創り出すことこそが私の使命であると考えています。特に作業リーダー層には実務のスキルだけでなく、スタッフとのコミュニケーションにおいて『傾聴』や『インサイド・アウト』※3の姿勢を重視するよう指導しています。スタッフが現場の課題や悩みをいつでも相談できる関係性を構築することを重視し、より良い職場づくりにつなげています。

※3  自分自身の内面(インサイド)をまず改めてから、外側・他の人(アウト)を変えることを提唱する米経営学者の概念。

今後の溝口さんの意気込みを教えてください。

エンタメグッズ物流は、当社の物流業務の中でも2019年12月から始まったコロナ禍の影響を最も受けた分野の一つです。私が担当するお客様の物流もコロナ禍には大きな影響を受けましたが、今ではコロナ禍以前よりも年々荷量が増加しています。今後もお客様の事業展開に合わせた最適な物流サービスを3.5PL※4事業者の立場からご提案し、確実にご支援していきたいと考えています。また、これまで培ったエンタメグッズ物流分野のノウハウを次世代の物流リーダーへ継承できるよう、人材育成にも注力していきます。

※4  お客様企業の物流戦略の策定(4PL)から実際の物流運営(3PL)までのサプライチェーンに関わる様々な課題解決を実現するNTTロジスコ独自の事業モデル。

ありがとうございました。

溝口 拓也(みぞぐち たくや)

東日本エンターテインメントロジスティクスセンター エンターテインメントグッズ物流 主査
物流技術管理士、医療機器製造責任技術者、第一種衛生管理者、ロジスティクス検定オペレーション2級/管理2級、TPS検定4級、シックスシグマグリーンベルト(品質改善手法「シックスシグマ」を実践するための中核的な資格)

物流センターでエンタメ業界のお客様物流の管理・お客様対応等を担当

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