第9回 “ミリ単位の品質が求められる”現場に挑む ― 化粧品物流の現場革新
Yuta Inai
Yuta Inai
第8回「多様化するIT機器物流を支える現場力-埼玉花崎センターの挑戦」では、IT機器物流の立ち上げから安定運営までの取り組みをご紹介しました。今回は、化粧品物流の集約拠点であり、高度な製造工程にも対応可能な千葉物流センターの現場において、お客様対応や改善活動等を担う化粧品物流リーダー 稲井雄多が「“ミリ単位の品質が求められる ”現場に挑む ― 化粧品物流の現場革新」について語ります。
稲井さんのこれまでの経歴を教えてください。
私は2016年にNTTロジスコ八尾物流センターへ入社し、介護用品の物流業務に従事してきました。2022年からは千葉物流センターで化粧品物流を担当し、現在はお客様対応、収支管理、作業計画の作成、人員調整等を担当しています。
千葉物流センターではどのような課題がありましたか。
当社の千葉物流センターは、「化粧品製造業許可」 を保有しており、複数の化粧品メーカー様に化粧品の製造業務をご提供しています。
私が最初に担当したお客様は高価格帯の製品を扱っており、非常に高い品質基準が求められていました。しかし業務の立ち上げ当初、現場の作業品質はお客様が求められていたレベルに達しておらず、不良品発生率の抑制が課題となっていました。

品質を改善するため、どのように取り組まれましたか。
まず、お客様が求められる品質基準を達成するため、作業者の教育から着手しました。お客様からは、製品ボトルの傷や既に添付されているラベルの汚れ・破れの有無の確認に加え、新たに貼付する日本語ラベルについても貼付位置がミリ単位で細かく指定されているなど、製品ごとに非常に厳格な品質基準が設定されていました。
そこで、作業者が製品ごとに異なる品質基準を正しく理解できるよう、製品のサンプルを用いた教育を実施しました。作業者に対して、実際に店舗で不良品として返品された製品と良品のサンプルを比較してもらうことで、求められる作業品質レベルを具体的に理解してもらう取組みを実施しました。その結果、作業者一人ひとりが自身の作業で求められる品質に対する認識が統一され、作業品質の安定化が実現しました。
次に、作業方法の見直しを行いました。従来のセル方式※1では、検品・法定ラベル貼付・箱詰めまでの一連の作業工程を、作業者各人が完結する形で進めていました。しかし、一人が複数の工程を担当する場合、各工程の作業品質が作業者の習熟度に依存しやすく、その結果、品質全体にばらつきが生じていました。そこで、作業者ごとに各工程を割り当てるライン方式※2へ変更し、各作業者が特定の作業だけに専念するようにしました。あわせてスキルチェックシートを活用し、作業工程ごとの習熟度を管理することで、全体の品質の底上げを図りました。これらの取組みにより、検品・ラベル貼付それぞれで基準に沿った作業が徹底され、安定した品質で製造作業を行える体制が整いました。
※1 セル方式:一人の作業者が複数の工程(検品・ラベル貼付・箱詰めなど)を一貫して担当する作業方式
※2 ライン方式:作業工程ごとに役割を分担し、複数の作業者がそれぞれの工程を担当して作業を進める方式

この工程分担に基づきライン毎のチーム制を導入しました。具体的には、1ラインを5名のチームとし、検品工程2名、ラベル貼付工程2名、リーダー兼箱詰め1名の構成にしました。各チームは、日々の作業において進捗と品質を確認し、リーダーが最終的なチェックをすることにより、個人作業に起因する品質のばらつきを抑え、作業の中で発生した不備をその場で修正できるようになりました。さらに、各チームのリーダー間で品質基準を確認することで、チーム間の品質差異の解消も図られ、製造工程全体で均一な品質を維持できるようになりました。
また、担当していた当該物流は荷量の変動が大きく、納期に合わせた人員調整が必要でした。特に海外からの輸入品については入荷時期の影響を受けやすく、作業量に大きな波動がありました。しかし、化粧品の製造作業は厳しい品質基準に対応できる作業スキルが求められるため、未経験者では対応が難しく、繁忙期に必要となる人員数を確保することが困難という課題がありました。この課題に対し、複数の化粧品物流が集約されている千葉物流センターの特性を活かし、繁忙期に同種の製品を扱う他物流との間で有スキル人員を相互融通する体制を構築しました。この結果、当該物流においても突発的な作業量増加により増員が必要なタイミングにおいて、スキルを持つ人員を柔軟に配置できるようになり、作業の滞留や出荷遅延を防止できるようになりました。
品質面以外ではどのような取組みをされましたか?
従来取り扱うことができなかった個人向けのギフト配送に対応しました。従来はギフト用途での出荷を想定した梱包資材が整備されておらず、ギフトボックスの外観を保った状態で配送できなかったため、新たに外装用の梱包資材を導入することにより、ギフトボックス本体の外観を維持したまま配送が可能となりました。オンラインサイトで購入されたお客様にもギフト対応が可能となり、荷主であるお客様のサービスラインナップの拡充につながりました。
さらに、お客様の直営店舗における負担軽減を目的に、配送時に配達ドライバーが店舗内で開梱や製品の取り出し、梱包資材の回収までを行う配送サービス「コンシェルジュライナー」※3をご提案しました。従来の宅配便による配送から、複数店舗を効率的に配送するルート配送に変更したことで、配送コストを約20%削減しました。さらに、店舗での開梱や廃材処理が不要となり、店舗スタッフの作業時間削減と業務負荷の軽減を実現し、お客様から高い評価をいただきました。
※3「コンシェルジュライナー」:お客様の店舗で発生するニーズに合わせて配送に様々な付加価値サービスをご提案するNTTロジスコ独自の配送サービス
「コンシェルジュライナー」は、NTTロジスコが商標登録出願中の商標です。

また、包装工程に全自動シュリンク包装機を導入し、包装品質のばらつきを抑制するとともに、一日あたりの処理能力を手作業時と比較して5倍程度向上させ、作業時間の短縮によりコスト削減にも貢献しました。
検品工程で発生する不良品について、店舗でのテスター品やアウトレット品としての活用もお客様にご提案し、採用いただきました。本来廃棄される製品の一部を有効活用できるようになったことで、廃棄コストの削減と不良在庫の削減にもつながりました
化粧品物流の現場責任者として重視していることは何ですか。
長年多くの化粧品物流に携わってまいりましたが、最も重要なのは、作業者一人ひとりが品質向上の意識を持つことです。そのため、作業者に対して「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」に関する薬事勉強会や製造作業の理解度テストを定期的に実施し、常に品質基準に対する理解を深めてもらっています。お客様ごとの製品特性や基準の変化にも対応できるよう、研修内容についても継続的な見直しを行っています。
今後の稲井さんの意気込みを教えてください。
現在、千葉物流センターの化粧品物流では高品質かつ効率的な運営体制を実現していますが、人手作業には限度があります。そこで、今後は検品やラベル貼付の自動化を進めるとともに、工程全体の見直しも含めたさらなる生産性の向上に取り組んでいく必要があると感じています。
また、当センターでは今後も新たな化粧品物流サービスの展開が計画されており、現在は今秋開始予定の新サービスの準備を進めています。これまでの取り組みで培った製造作業の品質管理や人員配置のノウハウを活かし、より安定的で効率的な製造作業体制を確立していきたいと考えています。今後は、これまで積み重ねてきた改善活動をさらに発展させ、現場からの工夫と実践を積み重ねることで、サービスの質を一段と高め、お客様の期待に確実に応えられる化粧品物流の実現を目指していきます。

ありがとうございました。
稲井 雄多(いない ゆうた)
千葉物流センター 化粧品物流 リーダー
ロジスティクス検定オペレーション2級/管理2級、TPS検定4級
物流センターで化粧品業界のお客様物流の管理・お客様対応・改善活動等を担当
