運用開始された試着・返品サービス
“双方向サプライチェーンの構築”と題して英アズダを取り上げたのは2017年3月であった。ウォルマート傘下の総合スーパーであるアズダは、英国の97%をカバーする自社配送網と650を超える店舗や提携ガソリンスタンドに設置した宅配ロッカーを用いた通販商品の受取りサービス、返品が20%に達するアパレル商品に対処する受取り拠点での試着・返品サービス(“toyou”)など物流サービスを強化し、他ネット通販にもそのサービスを提供している。日本においても現状5%程度の返品率は、今後上昇が予想されるため、試着・返品拠点の整備と、返品を前提とした双方向サプライチェーンの構築の必要性を指摘した。
同じころ、小島ファッションマーケティング代表・小島健輔氏は、通販商品お試し受け取り所”TBPP”(Try Buy Pickup Point、http://www.apalog.com/kojima/archive/1935)を提唱している。TBPPは「購入の前に試せる」点でさらに進歩的だ。TBPPにまでは至らないが、試着・返品サービスの取組みはすでに始まっている。
ヤマトシステム開発は2018年1月からの実証実験を経て、2019年3月より銀座かねまつ、三陽商会、ディノス・セシールなどのECサイト向けに試着・返品サービス”Fittingステーション”の提供を始めた。洋服のお直しサービスを提供する会社と組むことで、裾上げなどにも対応できる点が優れる。三井不動産商業マネジメントは、自社の通販サイト“&mall(アンドモール)”で購入した商品の試着・返品サービス“&mall DESK(アンドモールデスク )”を全国のららぽーとなどで提供している。
“Fittingステーション”の実証実験では、「生地の感触や質感が分かる」「試着ができる」というアパレル特有のニーズ対処に加えて、ブランド店員による”売るための接客”ではなく、洋服のお直し会社による”フィッティング支援”が評価されている点が興味深い(https://www.nekonet.co.jp/news/20190322)。
しかしこれら試着・返品サービスはまだブランドと地域が限定的であるため、購買後の利便性向上にはなるが、このサービスの有無が購買の決定的要因になるほどの影響力はまだない。今後、大手ECやECモールなども、サービス提供を始めるだろう。だれがプラットフォームとしての地位を築くか興味深く見守りたい。