空調専業とサービスとの融合で4兆円へ(ダイキン)
“売上高2兆円、営業利益約2千億円を誇る世界一の空調機器メーカー”ダイキンを取り上げたのは2017年の9月であった(数字は2016年3月期)。バブル崩壊後の業績低迷で一時は家庭用エアコンからの撤退まで検討していたダイキンだが、海外に新たな市場を求めてグローバル化を決意。各地域の供給・販売体制を構築し世界の主要市場を次々に制覇していった。「実行なき戦略は無に等しい」という井上会長の強力なリーダーシップの下、各国の販売会社や現地メーカーのM&A、あるいは提携を巧みに使い分けて進出先市場に合わせた商品を展開すると同時に、製品とサービスを組み合わせた“システム化”により他社との差別化を実現したことがグローバルサプライチェーン構築の成功要因であると指摘した。
その後2019年3月期では、売上高を2.48兆円、営業利益を2千760億円にまで伸ばし好調を維持しているが、先ごろ興味深い記事がwebに掲載された。いわく「『韓国メーカーはほぼ駆逐』 日の丸電機ができなかったことをどうしてダイキンはできたのか」(*1)、だ。記事ではインド進出当時、シェア1位だった韓国メーカーに対抗するために、価格勝負を避け丈夫な製品を供給するとともに、韓国メーカーの苦手なサービス強化に取り組んだことが勝因と述べられている。
このことは、2013年のレポート「世界的に業績二極化する電機メーカー —総じて堅調な重電・インフラ系メーカー、明暗分かれる弱電系—」(*2)の指摘とも符号する。レポートは、ソニー、パナソニックなどのデジタル・白物家電メーカーが苦戦し、日立、東芝、三菱などの総合電機メーカーが堅調なのは、重電・インフラ分野では施工・メンテナンスといった「サービス」のための要員育成に時間を要するため、弱電分野のように外部から人材を引き抜いて短期間で陣容を整えることが難しいことが理由であると指摘している。
この指摘は、そのままダイキンにも当てはまる。もちろんダイキンは総合電機メーカーではなく、エアコン専業メーカーだが、「エアコンで負けたら終わりという危機感でやっていたら、いつの間にかトップになっていた」(*1)とむしろ逆境をバネにしている。この勢いでダイキンは、アフリカ、中南米、中東へも新たに進出し売上4兆円を目指すという。注目したい。
*1:宇野麻由子、“「韓国メーカーはほぼ駆逐」 日の丸電機ができなかったことをどうしてダイキンはできたのか”、日経 xTECH
*2:永井知美、“世界的に業績二極化する電機メーカー —総じて堅調な重電・インフラ系メーカー、明暗分かれる弱電系—”、東レ経営研究所、経営センサー2013.