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月刊ロジスティクス・ビジネス連載
『サプライチェーン解剖』その後

金沢工業大虎ノ門大学院MBAプログラム 教授
上野 善信

月刊ロジスティクス・ビジネスで連載中
『サプライチェーン解剖』の著者が、掲載記事のその後を追跡!あの会社は、どのような対策を打ち、現状どうなっているのか?

(1回/月 毎月20日頃更新)

物流再編のビジョンは見えず(コカ・コーラ ボトラーズジャパン)

2019年12月20日

“巨大ボトラー誕生の背景と課題”と題して2017年1月に誕生したコカ・コーラ ボトラーズジャパンを取り上げたのは2017年4月であった。瓶詰めと配送を行う日本各地の17のボトラー企業とのフランチャイズ契約の上に成り立つコカ・コーラの地域密着型流通システムは、清涼飲料市場創成期の日本において、新たな市場の創出とコカ・コーラブランドの浸透に大きく貢献した。しかし、ビールメーカー各社が子会社を通じて市場参入し競争が激化した。フランチャイザーである米国本社(ザ・コカ・コーラ・カンパニー)主導で12社のボトラーを18年かけて段階的に統合し設備・人員両面での効率化を目的に誕生したのがコカ・コーラ ボトラーズジャパンだ。しかし、その営業利益率は2.5%と低く、12%を超える他国コカ・コーラのみならず5.6%のサントリーフーズにも大きく劣った。ケースでは、今日の輸送インフラを前提に、工場の統廃合と物流ネットワークを再構築することが急務あることを指摘した。

ケースから2年半が経過したが、この間天災によるサプライチェーンの寸断や原材料の高騰など事業環境はより困難になっている。特に、競争優位の源泉でもあった自販機チャネルの比率低下(2006年35%から2018年27%)はコカ・コーラにとっては強い逆風だ。その結果、市場シェアでも2015年の27%から2018年には26%に低下し、同22%のサントリーフーズの足音が聞こえてきそうだ。また、改善が期待された営業利益率も2018年度の実績で2.5%と進歩は見られない。

もちろん、コカ・コーラも手をこまねいている訳ではない。2019年3月には、日本でボトラーの統合にリーダーシップを発揮したカリン・ドラガン氏が代表取締役に就任し、700人の希望退職の募集、旧ボトラー別に分散した営業組織の変革、物流ネットワーク「新生プロジェクト」の下での新自動倉庫稼動、CokeOne ERPの全社導入など様々な手を打っている。

しかし、サントリーの9工場に対して16工場を抱える非効率な生産・物流体制の改革ビジョンは見えてこない。2017年に発表した2020年に営業利益率6%という目標は、2022年に3~4%、2024年に5~6%という目標に後ろ倒しになってしまった。もしこのまま営業利益率の改善が進まないままシェア1位から陥落すれば、コカ・コーラが首位に返り咲くこと二度とないだろう。

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