NTTロジスコ

月刊ロジスティクス・ビジネス連載
『サプライチェーン解剖』その後

金沢工業大虎ノ門大学院MBAプログラム 教授
上野 善信

月刊ロジスティクス・ビジネスで連載中
『サプライチェーン解剖』の著者が、掲載記事のその後を追跡!あの会社は、どのような対策を打ち、現状どうなっているのか?

(1回/月 毎月20日頃更新)

P&Gとウォルマートから考えるCPFRの今後

2020年2月20日

“SCM先進企業のビッグデータ活用”と題して米プロクター・アンド・ギャンブル(以下P&G)を取り上げたのは2017年2月であった。世界最大の消費財メーカーであるP&Gは1990年代にウォルマート と組んだCPFR(Collaborative Planning, Forecasting, and Replenishment、小売とサプライヤーによる協調的予測・計画・補充)でサプライヤーとの連携を模索し流通系SCMのブームを巻き起こした。しかし2000年代に入るとP&Gはビッグデータを活用して直販サイトP&G eStoreによる消費者情報の直接収集や、CDSN(Consumer Driven Supply Network:消費者始動の供給網)による消費者との連携を指向し、2010年代には “ワン・コンシューマープレースにより数多ある自社ブランド間の連携に舵を切った。CPFRで志向したサプライヤーとの連携には興味がないようにも見える。

一方のウォルマートはどうか。あるクリスマスシーズン、サプライヤーからの入荷予定情報と3PLの倉庫やマテハン機器のキャパシティー情報が不十分な状況でクリスマスツリーの入荷指示を乱発した結果、倉庫の受け入れ体制が整わず仮置きされたツリーは引当てができず出荷業務が大混乱に陥ったことがある。このような機会損失を防ぐには単なる予測情報の共有というCPFRでは不十分であり、供給制約をより深く把握することが必要だ。実際、ウォルマートの投資はこちらの方向性のようだ。

SPAが自社バリューチェーンのあらゆる情報を上から下まで把握してサプライチェーンの最適化をすすめる一方で、メーカーと流通はCPFRを高めるというよりむしろ投資の方向性がすれ違っているようだ。もちろん、プライベートブランドのみを扱うSPAと、様々なナショナルブランドを扱う流通業は顧客価値が異なる。

SCMの視点から見ると、前者はサプライチェーンの最適化による顧客対応力やコスト面での差別化を指向し、後者は品揃えと規模の経済性によるコスト面での差別化を指向しているのだろう。サプライチェーンの最適化と品揃えの双方を実現するプラットフォームの実現には、各種制約条件をも考慮するCPFRの正常進化版が必要だが、それはSPAのサプライチェーン構築より遥かに困難であることは言うまでもない。

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