NTTロジスコ

企業間の壁を越えたサプライチェーン最適化

Minobe Atsushi

Minobe Atsushi

第1回は、サプライチェーンの最適化に向けた新規ソリューションの開発とコンサルティングを担う当社コンサルティング営業推進PTのチーフ・サプライチェーン・コンサルタント 美濃部 篤が、「企業間の壁を越えたサプライチェーン最適化」について語ります。

昨今、様々なメディアで物流の2024年問題や物流クライシスについて報じられていますが、物流業界はどのような問題に直面しているのでしょうか。

多くの方々がご存知のように、2024年問題はトラックドライバーの時間外労働時間の上限が年960時間に制限されることにより発生する諸問題です。近年様々なメディアで注目されているため詳細は省略しますが、強調したいのは、この問題が「2000年問題のような特定のタイミングだけで起こる一過性の問題ではない」ということです。むしろ、これは2024年を契機に顕在化する問題であり、今後も益々トラックドライバーの高齢化、人手不足などによる物流の供給不足が年々深刻化していきます。

将来的な物流業界への影響の大きさはわかりました。その物流業界へ運送を委託する荷主企業にはどのような影響があるのでしょうか?

トラックを利用した輸送の需要と供給のバランスが崩れるため運送費用が上昇し、配送エリアの制限や荷受け時間の前倒しにより配送リードタイムが長くなることが予想されます。さらに、社会的に持続可能な物流へのニーズが増大しており、荷主企業へのESG(*1)面での要求も増加しています。

いまのままでは「運べなくなる」という危機感から、一部の企業ではパレット配送への転換、大ロット化、納品リードタイムの延長、時間指定の取りやめなど、過去には難しいと考えられていた納品条件を見直す動きがみられます。

では、3PL企業のNTTロジスコでは、どのような取り組みを進めていますか。

人手不足が深刻化する一方で技術の進歩が続き、将来的には物流は装置産業化するといわれています。では装置産業化するとはどういうことかというと、従来は荷量の変動や予想外の出来事に対して、労働集約型の強い現場力で対応できていましたが、機械や装置ではそのような変動や予測不能な事象への対応が難しくなります。

これまでの3PL企業は出荷指示が出た後の効率性を競ってきましたが、将来は装置の稼働率をいかに高めるか、つまり出荷指示を出す前のデータ段階で稼働率の最大化を織り込むことが鍵となります。そのため、計画段階の役割がより重要になってくるというパラダイムシフトが起きると私たちは考えています。
装置産業化が進展しても、人が手作業で行う部分は当面残ります。計画段階で荷量を平準化すれば、荷量の変動に応じた作業員の確保の必要性が減り、経験豊富な実務者への依存度が増すため、作業品質と効率が同時に向上します。さらに、納品量が一定に保たれることで、トラックの積載効率を向上させることも可能となるでしょう。

そのように考えると、大きな効果が期待できそうですね。

NTTロジスコは、1990年代にSCP(Supply Chain Planning)システムを構築し、在庫管理ソリューションをはじめとする計画系領域におけるBPO(*2)サービスを提供してきました。しかしながら、従来のシステムは処理能力に制約があり、ロジックの単純化など、理想的な業務仕様を満たすためのシステム処理に苦労していました。

しかし現在では、システムの処理能力が大幅に向上し、考案したロジックを短時間で処理し、ビジネスプロセスに組み込むことが可能になっています。その上、クラウドの活用により、高性能な処理能力を低コストで利用することが可能になりました。この進展により、大手企業だけでなく様々な企業の発注や補充の業務領域で導入が可能となり、その対象領域が大幅に広がりました。

さらには、2024年問題をきっかけに物流に対する社会的認識が変化し、納品条件の見直しを進めやすい風潮になりました。新たな条件下で、データドリブンの効果的な手法を導入することで、より最適なサプライチェーンマネジメントを達成できる環境が整ったといえるでしょう。

(*1):「Environment(環境)」、「Social(社会)」、「Governance(企業統治)」の頭文字からなる言葉で、それぞれを考慮した経営・事業活動、投資活動を指す。
(*2):Business Process Outsourcingの略。業務プロセスをまとまった単位で継続的に外部の専門企業に委託すること。

納品条件の見直しなど利害関係が絡む各プレイヤー間で協調関係を築くことは簡単なことではありませんよね。

2023年9月に「スマートリプ」(納品平準化ソリューション)をリリースした際、NTTロジスコは「サプライチェーンにおけるプレイヤーをつなぐサプライチェーントータルコーディネーター(SCTC)を目指す」と宣言しました。

経営ビジョン「私たちはお客様の物流を進化させ続け、お客様と社会に美しく透明な流れをつくる会社です」の実現に向けて、当社ミッションの「お客様にご満足いただける安全かつ最先端の物流」を提供し「お客様のSC最適化に貢献」するためには、何をすればよいか、を考えている際に、東工大名誉教授圓川先生の著書「戦略的SCM」に出会いました。その中で、圓川先生は3PLを「サプライチェーンの情報コーディネーターの役割を果たす売り手でも買い手でもない第三者を指す」と定義されています。この定義に触れた時、第三者の立場で調整を行いサプライチェーンの最適化に寄与するという3PLの社会的な役割を改めて認識しました。

そして、計画系の新たなソリューションを提供する過程で、各プレイヤーと協調的な関係を築くためには、情報だけでなく業務、時間、物流といった4つの要素を統一した形で連携させることの重要性を実感しました。その結果、これらをトータルで組み合わせた「サプライチェーントータルコーディネーター(SCTC)」という役割をこれから目指す目標として設定しました。

物流業界が直面する課題への取り組みにおいて、重要な役割を担っていくと言えますね。これからに向けての美濃部さんの意気込みを教えてください。

技術の進展による物流DXと2024年問題という社会的な問題が同時進行している今こそ、物流変革の絶好の機会が訪れています。これは特に3PL企業にとって、社会的期待に応えるとともに事業拡大を狙う格好のチャンスです。

当社の経営ビジョンの実現に向けて、共同配送や共用倉庫などの物流シェアリング、エンドユーザーの需要に基づいたプル型のサプライチェーン、異なる企業間での商流と物流の分離など、物流の共創化を推進し、複数の企業にまたがった成功事例を早期につくりあげたいと考えています。サプライチェーンに関わる各プレイヤーを最適化するだけでなく、社会的な面や環境負荷の軽減も含めた社会全体の最適化を実現し、サステナブルな社会づくりに貢献することが目標です。

この目標を達成するためには、NTTグループ企業に加え、物流業界のベンチャー企業や他の3PL企業とも積極的に連携し、共に業界を盛り上げていくことが必要だと考えています。

ありがとうございました。

美濃部 篤(みのべ あつし)

チーフ・サプライチェーン・コンサルタント
CPIM(Certified in Planning and Inventory Management)、物流技術管理士

AI等、新しい技術を使って今までにないソリューションをお客様に提案。「ムダなものを持たない、運ばない」「適頻度適量納品」「つなぐ」をコンセプトにコンサルティングサービスや計画系ソリューションを展開中

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