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第10回 技術力×現場力の融合によるリファビッシュサービスの高度化

Ken Toriida

Ken Toriida

第9回「“ミリ単位の品質が求められる”現場に挑む ― 化粧品物流の現場革新」では、化粧品物流の高品質な現場運営についてご紹介しました。今回は、IT機器物流の中核拠点である埼玉物流センターにおいて、リファビッシュサービスの回収・仕分作業における自動化設備の開発・導入のプロジェクトリーダーを務めた当社ICT事業本部の鳥井田健が「技術力×現場力の融合によるリファビッシュサービスの高度化」について語ります。

まず、埼玉物流センターで実施しているリファビッシュサービスについて教えてください。

埼玉物流センターで実施しているリファビッシュサービスは、一般家庭や事業所から撤去されたモデムやONUなどのレンタル通信機器を回収し、開梱・仕分け・初期化・クリーニング等を行った後、再利用可能な状態に再生するものです。
近年は資源を循環利用する、いわゆるサーキュラーエコノミーへの関心の高まりを背景として、このように回収したIT機器などを再利用するリファビッシュサービスのニーズが拡大しています。それに伴い、リファビッシュサービスの取扱量も増加しており、増加する回収機器を安定的に処理するための運営体制の構築が求められています。

これまでどのような自動化を進めたのでしょうか。

リファビッシュサービスではこれまで、クリーニング工程やセット化・検品工程など、自動化効率が高い工程から段階的に取り組みを進めてきました。
例えば、クリーニング工程ではモデム本体の清掃や電源アダプターケーブルのクリーニング・結束作業を自動化するロボットを導入し、作業負荷の軽減と生産性向上を実現しました。
また、セット化・検品工程ではAI画像認識技術を活用した自動検品システムを導入し、検品作業の安定化と作業時間の短縮を実現しました。
こうした取り組みによって、それぞれ一定の成果は得られましたが、リファビッシュサービスの最上流にあたる機器の回収登録・仕分け工程は、既に生産されていない旧機種を含む全ての回収対象機器を扱う必要があり、自動化が最も難しい工程として残されていました。
こうした中、近年になってAIや画像認識技術の進展により、多品種に及ぶ機器の自動識別も実用レベルで実現可能になってきました。そこで、2025年にAI画像認識による回収機器の自動登録(以下、「AI画像認識システム」)とAGV (t-Sort)※1による自動搬送・仕分けを組み合わせた「AI画像認識技術を用いた自動登録・仕分けシステム」の開発に取り組むこととなりました。

※1 AGVは無人搬送車のこと。「t-Sort」とはプラスオートメーション株式会社(本社:東京都江東区)が提供する無人搬送ロボット。

リファビッシュサービスの回収登録・仕分け作業における課題は何だったのでしょうか。

埼玉物流センターでのレンタル通信機器のリファビッシュサービスは2004年に開始しました。その後、インターネットの普及とともに回収対象機種は増加し、現在では対応機種数は360種類と約10倍、1日あたりの平均処理数は約6,000件と4倍にまで拡大しています。特に繁忙期には1日あたり約8,000件を処理する必要があり、現場への負荷も大きくなっていました。
こうした業務拡大を支えてきたのは、主に長年同じ業務に携わってきた熟練作業者の経験とスキルでした。しかし、2017年頃から作業者の高齢化に伴う退職や派遣社員比率の増加が進み、属人的な経験とスキルに頼った品質および生産性の維持が難しくなってきました。当時の現場では、実際にどのような作業が行われ、どのような課題を抱えていたのかについては、長年リファビッシュサービスの運営に携わっている田端からご紹介します。

埼玉物流センター 田端
以前は、一般家庭や事業所等から回収したレンタル通信機器を開梱後、作業者が360種類以上の機器を対象に、本体に貼付された製品名を一つ一つ目視で確認し、バーコードブックから該当する製品のバーコードを探してハンディスキャナーで読み取ることで、物品情報をWMS(倉庫管理システム)へ登録していました。さらに、その後の仕分け作業も手作業で実施していたため、人手への依存や作業の属人化が課題となっていました。

そのような課題に対して、どのような改善が必要だと考えていたのでしょうか。

当時の課題は、熟練作業者の記憶や経験に依存していた登録・仕分け作業を、誰でも同じ品質で実施できる仕組みに変えていくということでした。また、回収される機器の数や種類は増加していくことが見込まれていたため、従来の作業の延長では継続的な運営が難しくなることも予想していました。そのため、作業品質を維持しながら処理能力を高めるためには、自動化による変革が必要だと考えました。

「AI画像認識技術を用いた自動登録・仕分けシステム」(以下、「自動登録・仕分けシステム」)の開発・導入は、どのような体制で進められたのでしょうか。また、現場の課題や要望はどのように設計に反映されたのでしょうか?

同システムの開発・導入は、当社で物流業務の設計や運用構築及び荷主向け提案営業を担うICT事業本部と、AIやロボティクスを活用した物流改善を推進するロジスティクスイノベーション室(以下、LIO)、そして日々リファビッシュサービスを運営する埼玉物流センターが一体となったプロジェクトチームで進められました。
検討にあたって重視したのは、単なる設備導入ではなく、現場で継続的に活用できる仕組みを構築することでした。
ICT事業本部は、業務フロー全体を分析し、自動化による効果が大きい工程を抽出しました。その結果、AI画像認識システムによる製品判定とAGVによる搬送・仕分けを組み合わせることで、登録・仕分け工程全体を効率化できると判断しました。
また、埼玉物流センターの担当者も設計段階から参画し、実際の運用課題や改善要望を反映しながら検討を進めました。
さらに、LIOがAI画像認識システムの開発や搬送に用いるAGVを選定し、AI画像認識システム・WMS・t-Sortを連携させるシステム全体の設計を行いました。また、画像認識精度を向上させるためのカメラ・照明のパラメータ設計や、投入・搬送先ステーション等の設備設計も行いました。
こうした各組織の知見を持ち寄って開発を進めたことで、技術と現場の双方の視点を取り入れた「自動登録・仕分けシステム」の開発・導入を実現することができました。

「自動登録・仕分けシステム」により、現場の作業はどのように変わりましたか?

従来は、作業者が回収された機器ごとの物品情報を目視で確認し、バーコードブックから該当する物品コードを探してWMSへ登録していました。今回導入されたシステムでは、カメラで撮影した画像をAIが判定し、あらかじめ登録されたマスタ情報と照合することで、機器の判定精度を担保し、WMSに機器情報を自動登録することにより、人手を介さず効率的に仕分けることができます。その認識精度を実現するためにはさまざまな技術的工夫がありましたので、その点についてはシステム開発を担当した石川からご紹介します。

LIO 石川
仕分け対象となる物品は、エンドユーザーから返送された直後のクリーニング前の状態で汚れや傷、印字の欠損などが見られるほか、製造時期によるモデルの違いなどにより、外形の個体差があります。そのため、物品の撮影画像とマスタ画像を直接照合するのではなく、機器に表示された複数のバーコードの構造情報やOCRによる文字認識結果を活用しながら、撮影した画像から機器の特徴を抽出した上で、あらかじめ登録された情報との照合・判定を行う方式を採用しました。これにより、汚れの有無などの外形個体差に左右されることなく、安定した判定精度を実現しています。
また、WMSへの登録と、t-Sortを制御するシステムとの連携は、いずれもAI画像認識システムを介して行われます。AGVは登録された機器情報に基づき、指定された搬送先まで自動で搬送・仕分けを行うため、従来人手で行っていた仕分け作業の効率化と省力化を実現しています。さらに、倉庫スペースが限られていたことから、縦方向の空間を活用できる「t-Sort 3D」を採用し、限られたスペースの有効活用を図りました。

このように、技術面ではAI画像認識システムやAGVを活用した仕組みを構築しました。一方で、システムは導入しただけでは成果につながりません。現場で安定して運用できるようにするためには、運用開始後も継続的な改善が欠かせませんでした。

埼玉物流センター 田端
導入当初は、シューター部分の搬送でカゴが滞留してしまう課題がありましたが、現場でアルミ板を取り付けて滑りやすくするなどの改善を行い、安定した搬送を実現しました。実運用の中で課題を一つひとつ解決しながら仕組みを育てていったことが、現在の運用につながっています。

この仕組みを現場に導入するにあたって、どのような工夫や課題がありましたか?

今回の取り組みでは、単なる設備導入にとどまらず、前後工程を含めた作業全体の流れを見直しました。特に、開梱作業に慣れた作業者の生産性を低下させないことを重視し、既存の作業レイアウトを極力活かしながら設備設計を進めました。一方で、開梱作業場所と登録作業場所の距離が離れるため、新たにベルトコンベアを導入し、作業者の移動負荷を抑える工夫も行いました。また、運用開始後も埼玉物流センターを中心に、ICT事業本部・LIOが連携しながら改善を継続し、安定した運用体制を構築していきました。

今回の取り組みによって、どのような成果が得られましたか?

回収登録・仕分け工程における生産性を従来比で約30%向上させることができました。また、仕分けミスについても0%を実現しています。
こうした成果を実現できた理由は、AI画像認識システムによる登録・判定とAGVによる自動搬送・仕分けを組み合わせることで、人による作業や判断のばらつきを排除できたことにあります。
さらに、回収登録・仕分け工程の標準化により、経験の有無にかかわらず一定水準の品質で作業を行える運営体制を構築することにより、将来的な取扱量増加や人員構成の変化にも柔軟に対応できる基盤を整えることができました。また、作業者が登録や仕分け判断に費やしていた時間を削減できたことで、より付加価値の高い業務へ注力できる環境を整えることができました。
また、本取り組みはその先進性や実用性が評価され、一般社団法人日本自動認識システム協会が主催する2026年度「自動認識システム大賞」において優秀賞を受賞しました。現場課題の解決と先進技術の活用を両立した取り組みとして、社外からも高い評価をいただいています。

今回の仕組みは、リファビッシュサービスに限らず、物流現場におけるさまざまな工程への展開可能性を持っています。今後も現場課題を起点としながら、自動化やAI活用を通じてサービスの高度化を進めるとともに、技術と現場をつなぐ改善活動を継続していきたいと考えています。


LIO 石川(左)、埼玉物流センター 田端(右)

ありがとうございました。

鳥井田 健(とりいだ けん)

ロジスティクス検定オペレーション2級/管理2級、TPS検定4級

サービス構築・プロジェクトマネジメント・顧客提案営業

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